天狼星の欠片

自作の小説や趣味について雑多に書きます

お菓子と悪戯とパンツと私

「トリックオアトリート!」

 放課後の夕日が差し込む教室に私の声が響く。今ここには私と目の前にいる少女の二人しかいない。
 今日は十月三十一日。ハロウィンだ。ハロウィンといったら悪戯だ。悪戯といったら――。
「さあ愛依、諦めてパンツを見せるんだ」
 壁際に追い詰められてなお、反抗的な目を向ける私の可愛い親友。女子の中でも小柄な部類に入る愛依が、標準より大きいくらいの私に敵うわけないのに。私が手を伸ばすと、愛依は両手でスカートを押さえて首を振った。毛先が肩に触れるたび、滑らかな黒髪が乱れる。そんな光景はむしろクルものがあるのだけど……仕方ない。そこまで愛依が嫌がるのなら――。
「ひゃっ! ちょっと裕ちゃん……やっ」
 スカートに伸ばしかけた手を、小ぶりながら弾力のある愛依の胸に向ける。揉みしだくと愛依はこうして初々しい声をあげてくれる。可愛い。毎日こうしてるのに全然慣れない愛依本当可愛い。ただ揉むだけじゃ愛依も飽きちゃうだろうし、時に強く、時に撫でるようにほぐしていく。もっと愛依の柔らかさを堪能したくなって、ブレザーの上着を肩から抜き、シャツのボタンを上から三つほど外す。そこでやっと愛依の手が胸を隠すために上がってきたので、すかさず捕まえ、片手で両手首を頭の上に押さえ込んだ。空いた右手をキャミソールの中に差し込み、ブラジャーの上から揉みしだく。存在を主張するように尖った先端をつまみ上げると、甘い声と共に愛依の身体から力が抜ける。これはチャンス! キャミソールから手を抜き、もう一度スカートへと手を伸ばして――。

「それはダメー!」
「ぐはっ」
 愛依の容赦ない蹴りが脛に炸裂し、私は思わずうずくまった。と、視界がぐらりと揺れた。気がつくと眼前には蛍光灯と、上から覗き込んでくる愛依の顔が。愛依の顔が赤く見えるのが夕日の所以なのか、興奮しているのかはわからない。私としては後者の方が好ましいが。
「ねえ裕ちゃん。トリックオアトリートってどういう意味か知ってる?」
 私の肩を両手で掴んだ愛依が、ジッと私の目を見つめる。ちょっと待ってこの状況……愛依に押し倒されてる!? やだ興奮してきた。
「裕ちゃん?」
 愛依が満面の笑みで私を見てる。……目以外は。これは怖い、かな。流石に。
「えっと、トリックオアトリート? 悪戯させろって意味だよな」
「……本気で言ってる?」
「もちろ……いやいや冗談です本当にすみません愛依様!」
 愛依の頬がひくつくのを見て思わずそう言った。というかどうしよう。悶える愛依なら毎日のように見てるけど、怒る愛依なんて初めて見る。
「だよねー。というわけで、はい。これでもう悪戯出来ないね」
 愛依の手に握られたマシュマロが私の口に迫る。愛依の白い指と相まって綺麗……ってちっがう。これ食べちゃったら悪戯出来ないじゃん! 愛依のパンツ滅多に見れないから貴重なのに。
「ほら、口開けて?」
「んー!」
 嫌だ。愛依が私の為にお菓子を用意してくれたのは嬉しいし、愛依にあーんして貰えるなんて至福の極み。なんだけど、やっぱり嫌だ。今日こそはハロウィンのノリでパンツを見て、隙あらばその先も――って思ってたのに。それなのに。
「しょうがないなあ。ん」
 よっぽどパンツを見せたくないのか、愛依はマシュマロを咥えて顔を近づけてくる。白い肌を真っ赤に染めて。ちょっと愛依。私たち、キスまだなんだよ。それなのに愛依から……だなんて。大胆すぎるよ。もうパンツなんてどうでもよくなっちゃうほど頭の中愛依の唇のことで頭いっぱいだよ。もう――。

 マシュマロが私の口をこじ開け、愛依が舌で押し込んでくる。あと一センチでも近づけば唇が触れてしまう。いや、触れられる! 僅かに頭を起こし、その一センチを埋める。
「んっ……」
 甘い香りが、甘い吐息が口の中を満たす。マシュマロと共に入ってきた愛依の舌に、自分の舌を絡める。愛依は嫌がるどころか、積極的に唇を押し付けてくる。キスってこんなにも甘いものなんだ。思わず息を呑むと、愛依が紅潮した顔を離した。お互いの唇から引いた唾液がプツンと切れる。私の理性も一緒くたに切れてしまったような気がした。
「愛依……っ」
 けど、私の肩は依然として強く抑えられている。動けない私を見下ろす愛依は、今までの責められてばかりの愛依とは違う、強く妖艶な笑みを浮かべていた。どうやら私は、愛依の中に秘められた何かを開放してしまったようだ。これから私の受ける仕打ちを考えて……うん、悪くない。それはそれでイイ。

「裕ちゃん。裕ちゃんはお菓子くれないの? くれないなら……こっちのお菓子を戴きます」
 愛依の手がスカートの中に伸び、私の大事なところをつつかれる。布一枚越しとはいえ、自分で触るのとは訳違う感覚に、自然と声が漏れてしまう。これって、いつもとは完全に立場逆転だよね。でもむしろこの方がイイって思っちゃってる私も、何かに目覚めちゃったのかなあ? ううん今はそんなことどうでもいい。どうでもいいと思えちゃうほど、愛依の責めが、激しくてえ……っ!
「んあっ。愛依っ。そこだめえ……っ。んっ?」
 愛依の手には青と赤の縞模様のパンツが握られている。って、それ私のパンツ! いつの間に脱がされてたの!? そういえば確かに下半身がスースーする。体験ことのない快感に、パンツの有無まで意識から飛んでいってしまうなんて。愛依って――。
「うまいね」
「何が?」
 私の足の間に屈んだ愛依が、キョトンとした様子で首を傾げた。うん、こういう無垢な表情は愛依らしい。愛依だけに愛らしい。なんてね。
「その、悦ばせるのが」
 興奮とは違う赤みを浮かべた愛依の顔は、私のスカートの中に消えてしまった。
「裕ちゃんがいつもやってくるから身体が覚えちゃってるだけだから。こんな日が来るかもって思って勉強してたわけじゃないから」
 愛依らしい可愛い物言いに、いつもなら微笑ましく思うんだけど。そこで喋られたら吐息がもろに当たって、漏れそうになる声を抑えるのに精一杯……な、のっ!
「ひうっ!」
 溝に沿って舌ですくい上げられて、ついに声が漏れてしまう。一度出てしまうと、もう全て抑えられなくなってしまった。容赦なく責められ、私も身体の全てを快感に委ねる。だんだん頭が真っ白になっていく中で、ある一つの単語だけが意識に逆行して浮かび上がってくる。

 ……っ。……つ。……んつ。……ぱんつ。パンツ!

「きゃっ」
 驚いた愛依の声で我に帰ってみると、いつの間にか形勢逆転していて、私の腕の下に愛依がいた。驚いて動けないでいる愛依を離すと、勢いよくスカートをめくり上げた。
「っ……これは!」
「え……ひゃあああっ!」
 うん。これは私も予想外だよ。愛依が必死になって隠すのも分かる気がするよ。うんうん。……まさか制服のスカートの下にふんどしを履いてるだなんて。そんな女子校生日本中探しても愛依以外いない気がする。いや、絶対いないでしょ。
「ああああのね、これはそのたまたまでね。パンツが全部洗濯されちゃったから、仕方なくというか」
「いや、そもそも何でふんどしなんて持ってるんだよ」
「えっと……趣味?」

 はい確定! 愛依がど変態なの確定! 私が言えるようなことじゃないかもだけど、とにかく確定!
「あのっ裕ちゃん。人に受け入れられるような趣味じゃないことは重々自覚してるんだけど、その、引かないでね?」
 愛依がパンツ――もとい、ふんどしを隠すのも忘れて身を乗り出してくる。必死な愛依可愛いなあ。興奮はするけど引くことは絶対ないってのに。
「愛依は今までも、スカートの下はふんどしだったりしたのか?」
「ふえっ!? ううん、学校に履いてきたのは初めてだよ。いつもは家で履いてるだけで。……あっ」
 自分でどんどん暴露しちゃって照れてる愛依可愛い。
「ふぅん」
「ごめんなさい。もう履かないから、だから引かないで。裕ちゃんに見捨てられたら私……」
「なあ愛依。私、ふんどしを間近で見るのって初めてなんだよね。その、もっとよく見せてくれないかな?」
 愛依の顔が、誰から見ても明らかなほど、ぱあっと光り輝いた。そんなに私に引かれるのを怖がってたなんて。私はいつでも愛依に惹かれてるんだよっ!
「へええ、確かにパンツと違って締め付けられないし、気持ちよさそうだねえ」
 そう言いながら腰に手を回し、後ろの紐を解いてやる。
「うん。気持ちいいんだけど、スカートだとスースーして心元なくて、でも癖になりそうだったよ」
 必死になって大事なところを隠そうとする愛依の手をそっと剥がす。思ってたとおり、綺麗だな。ソコ。
「ダメだって裕ちゃん。忘れてるかもしれないけど、ここ教室だよ?」
「さっき散々私のを舐めてた人には言われたくないなー」
「うっ……それは」
 どうやらスイッチが切れてしまったらしく、いつもの恥ずかしがり屋の愛依に戻っている。さっきの妖艶な愛依もいいけど、やっぱりこれこそが愛依だよね。
「じゃあさっきのお返し――いや、もっと気持ちよくしてあげるねっ」

 露わになった愛依のソレに顔を近づけ、美味しそうな愛依の味を堪能する。愛依の口から、初々しいだけではない、艶やかな声が漏れる。やば、これ止められないよ。
「裕ちゃ……そろそろこれくらいに……んっ……もう限界なのおおおおおっ!」
 愛依の身体が激しく痙攣したと思ったら、全身の力が抜けてしまったかのようにぐったりとしてしまった。これって、まさか――。
「愛依、もしかして……イった?」
 両手で股を押さえてそっぽを向く愛依が、真っ赤な顔を微かに縦に振った。可愛い。本当どんな愛依も死ぬほど可愛い。
「もう、裕ちゃんのばか」
 愛依がそっぽを向いたまま、そっと囁いた。もう、今日の愛依はどれだけ私を悶えさせたら気が済むの。
「ふふふ、愛依はほんっとうに可愛いなあ。もう食べちゃいたい――あっ」
「これ以上は本当にダメだって――へっ?」

 愛依の向こう、入口に佇む彼女と目が合ってしまった。一瞬遅れて愛依も気づく。
「……」
「……」
「……」
「「ちょっといつからいたの!?」」
 彼女――同じクラスの優等生、美咲は、頬を赤らめながらメガネをクイッと正した。
「そ、そんなのどうだっていいでしょう! そんなことより、貴女たちこんなところで何やってるんですか。不潔ですよ!」
 美咲の言葉に反論する余地がなくて、私たちはバツの悪い顔をするしかなかった。
「えっと、ハッピーハロウィン?」
「そーだねー。ちょっとした悪戯?」
「貴女たちにとって乳繰り合ったりキスしたりあんなところを舐め合うのはちょっとした悪戯なんですか!?」
 美咲が茹でダコみたいに顔を真っ赤にしてまくし立てる。
「なんか、はっきり言われると恥ずかしいね」
「だねえ。っていうか美咲ちゃん、だいぶ前から見てたんだねえ」
「ななな何を言ってるんですか! 美咲は口移しでマシュマロを食べているところなんて見てないですよっ!」
 うん。盛大に墓穴掘ったな。美咲って、真面目で人を寄せ付けないところがあって今まであまり喋ったことなかったけど、もしかしてかなりアホの子なんじゃないの? ふふふ、弄りがいがあるね。

「愛依、立てる?」
「当然。裕ちゃんの考えそうなことは大体わかるからね。協力するよ」
 二人で美咲を挟み込むように、ジリジリと距離を詰める。
「ちょっと貴女たち、何をする気なの!?」
 美咲が怯えて後ずさる度、彼女の豊満な胸がぷるりと揺れる。よく見ると美咲って、かなり胸大きい。愛依の小ぶりな胸もいいけど、巨乳もたまんないね。揉みほぐしたいね。吸いつきたいね。
「行くよ愛依っ!」
「了解っ!」
「ちょっ、何を……きゃああっ!」
 両側から一気に突っ込み、美咲を押し倒す。これで美咲の自由を奪ったも同然! さあ、私の、私たちの悪戯はここからが本番よ!

「「トリックオアトリート!」」